立ち上げたばかりのフランチャイズ本部が、最初にぶつかる壁があります。加盟を募っても、反応がない。説明会を開いても、人が集まらない。
私たちも、この壁を経験しています。立ち上げ間もない格安レンタカーの本部で加盟開発を担ったとき、最初は思うように進みませんでした。そこから流れを変えたのが、加盟してもらう相手の業界を絞るという判断です。ガソリンスタンド(SS)業界に特化してアプローチするようになってから、提案が通り始め、最終的に3年で65店舗まで広げることができました。この記事では、その経験から、立ち上げ期の本部が「業界特化」で突破する考え方をお伝えします。
この記事の目次
なぜ立ち上げ期は「誰にでも」が効かないのか
実績のある本部なら、店舗数や成功事例そのものが加盟の判断材料になります。しかし立ち上げ期の本部には、それがありません。加盟を検討する側から見れば、「本当にうまくいくのか」を判断する材料がない状態です。
その状態で、個人も法人も、どんな業種の会社も対象に幅広く募集すると、どうなるか。メッセージが一般論になり、誰にとっても「自分ごと」になりません。実績がないうえに、自分に関係あるかも分からない。これでは反応が返ってこないのは当然です。
実績で語れない立ち上げ期こそ、「あなたの会社なら、こう活かせる」と具体的に言える相手に絞る必要があります。
業界を選ぶ3つの基準
では、どの業界に絞ればよいのか。私たちがSS業界を選んだ理由を整理すると、次の3つの基準になります。
① 本業の顧客・立地をそのまま使える
新しい業態を始めるとき、最もお金と時間がかかるのは、場所探しと集客です。本業ですでに持っている立地や顧客基盤をそのまま使えるなら、加盟のハードルは一気に下がります。
② 本業のスタッフを転用できる
法人にとって、新規事業のために専門人材を新たに採用するのは大きな負担です。今いるスタッフが、無理なく新しい業務を担える設計であれば、検討の土俵に上がりやすくなります。
③ 本業が頭打ちで、新規事業を探している
どれだけ相性が良くても、相手に「新しいことを始めたい」という動機がなければ話は進みません。本業の先行きに課題を感じ、次の収益源を探している業界は、提案を聞く姿勢がまったく違います。
SS業界は、この3つがそろっていました。幹線道路沿いの敷地と車で来店する顧客があり、スタッフは車の扱いに慣れている。そして燃料販売の縮小を背景に、新しい収益源を真剣に探している。格安レンタカーという業態にとって、これ以上ない相手でした。SS業界の事情や提案の現場については、ガソリンスタンド業界への新規事業提案の事例で詳しく書いています。
業界特化で変えた2つのこと
業界を絞っただけでは、まだ半分です。実際に提案が通るようになったのは、絞った業界に合わせて、やり方そのものを変えたからです。
① 提案資料を、その業界専用に作り直した
どの業界にも使える汎用の募集資料では、相手は自社への当てはめを自分でしなければなりません。そこで資料を、その業界の言葉と前提で作り直しました。「御社の敷地のこの部分で」「今の人員配置のままで」「本業の顧客にこう案内できる」。相手の業界の現場を前提にした提案は、読み手の受け取り方がまったく変わります。
② 1社決まったら、同業他社への事例にした
業界を絞る最大の利点は、ここにあります。同じ業界の会社は、同じ課題を抱え、同業がどう動いているかを強く気にしています。1社目が導入したら、その実例が、同業他社への何よりの判断材料になる。立ち上げ期に足りなかった「実績」が、業界の中で一つずつ積み上がっていくのです。幅広く狙っていたら、1社目の実績は他業種の相手には響きません。
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業界を絞ってから、1社目が決まるまでの進め方
業界を決めたら、次の順番で進めます。
- アプローチ先を業界で洗い出す:その業界で、自社の業態を置けそうな拠点を持つ会社をリストにする
- 相手の現状を把握する:敷地の空き、スタッフの人数や稼働、本業の課題を、提案の前に確かめる
- 業界専用の提案をつくる:その会社の拠点と人員を前提に、何がどう変わるかを相手の言葉で示す
- 1社目を丁寧に立ち上げる:最初の導入先を成功させることに力を集中する。ここでの結果が、業界内のすべての提案の材料になる
- 同業への事例にする:1社目の取り組みを、同じ業界の次の提案先に見せる
特に4つ目が重要です。立ち上げ期は、1社目の成否がそのまま本部の評判になります。数を追って次々に契約するより、1社目を確実に成功させる方が、結果的に早く広がります。
業界特化の落とし穴
業界特化は強力ですが、注意点もあります。
- 業界の景気に左右される:一つの業界に依存すると、その業界全体が冷え込んだときに加盟開発も止まります
- 業界向けに寄せすぎる:特定業界の要望に合わせて業態を変えすぎると、他の加盟者に展開しにくくなります
- 「次の業界」を考えていない:一つの業界で型ができたら、同じ3つの基準で次の業界を探す準備をしておくことが大切です
業界特化は、ずっと続ける戦略ではなく、実績のない時期を突破するための戦略と捉えるのが現実的です。
自社に当てはめるための3つの問い
自社の業態に合う業界を探すときは、次の3つを問いかけてみてください。
- この業態は、どの業界の「既存の立地や顧客」をそのまま使えるか
- どの業界の「今いるスタッフ」が、無理なく担えるか
- その業界は今、本業の先行きに課題を感じ、新しい収益源を探しているか
3つすべてに当てはまる業界が見つかれば、そこが立ち上げ期の突破口になる可能性が高い。法人を相手にした提案の進め方はフランチャイズの法人加盟の獲得法で、段階ごとの加盟開発の打ち手は加盟開発の実績と事例で解説しています。
まとめ
実績のない立ち上げ期の本部は、「誰にでも」では動きません。顧客・立地を使えるか、スタッフを転用できるか、新規事業を探しているか。この3つで業界を絞り、その業界専用の提案をつくり、1社目を同業への事例にする。そうして業界の中で実績を積み上げることが、立ち上げ期を抜け出す近道です。加盟開発の全体像は加盟開発の完全ガイドをご覧ください。
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