この記事の結論
飲食のフランチャイズ本部が加盟希望者に示すべきなのは、売上の見込みだけでなく、FL比率(材料費+人件費)とFLR比率(+家賃)を含めた収支モデルです。FL比率は一般に50〜60%が推奨とされますが、大切なのは水準よりも前提条件です。オーナーの人件費を含めるか、家賃をどの立地で見るか、開業直後の売上をどう置くか。この3点を明記し、楽観・標準・悲観の3通りで示すと、加盟後の見込み違いを防げます。
「この業態なら、月にいくら残るのか」。加盟を検討する方が最後に確かめたいのは、この一点です。
私は飲食・焼肉のフランチャイズで加盟開発の責任者を務め、50店舗の展開に関わりました。加盟希望者が判断するとき、収支の数字は避けて通れない項目です。そして数字の示し方を誤ると、加盟後に「聞いていた話と違う」という不満につながります。
この記事では、飲食のフランチャイズ本部が加盟店に示すべきFLコスト・FLRの考え方と、収支モデルで見込み違いを防ぐポイントをまとめます。
FLコストとFLRとは
FLコストは、材料費(Food)と人件費(Labor)を合計した金額です。売上に占める割合を「FL比率」と呼びます。FLRコストは、そこに家賃(Rent)を加えたものです。
| 指標 | 計算式 | 一般的な目安 |
|---|---|---|
| FL比率 | (材料費+人件費)÷売上×100 | 50〜60%が推奨とされる |
| 原価率(材料費) | 材料費÷売上×100 | 35%前後 |
| 人件費率 | 人件費÷売上×100 | 25%前後 |
| FLR比率 | (材料費+人件費+家賃)÷売上×100 | 立地で大きく変わるため、一律の目安は示しにくい |
※目安はSquareの解説(FLコストとは?)によるものです。焼肉・カフェ・居酒屋など、業態によって構成は大きく異なります。
飲食店の費用のなかで、材料費・人件費・家賃は大きな割合を占めます。だからこそ、ここが崩れると利益は簡単に消えます。
本部が加盟店に示すべき3つの数字
1. FL比率(材料費と人件費)
本部が最もコントロールしやすい部分です。標準レシピ、指定食材の仕入れ価格、標準シフトは本部が決めるものだからです。既存店の実績をもとに、材料費と人件費の内訳まで示します。
2. FLR比率(家賃を含めた比率)
家賃は物件ごとに違います。FL比率が同じでも、家賃の高い立地では利益が残りません。加盟希望者には「家賃がいくらまでなら成り立つか」という上限の考え方もあわせて示すと、物件選びの判断がしやすくなります。
3. 営業利益と、投資の回収期間
最終的に加盟店が知りたいのは、手元にいくら残り、初期投資を何年で回収できるかです。FLRのほか、水道光熱費、ロイヤリティ、広告分担金、消耗品、リース料なども差し引いた数字で示します。
見込み違いが起きやすい5つのポイント
1. オーナー自身の人件費を含めていない
オーナーが毎日店に立つ前提で人件費を低く見せると、数字は良く見えます。しかし、オーナーが休めば、その分の人件費が発生します。どちらの前提かを必ず明記し、できれば両方の数字を示します。
2. 家賃を既存店の水準で置いている
既存店が好条件の物件なら、その家賃をそのまま当てはめると見込みを誤ります。出店予定地の家賃で計算し直す手順を、本部の側で用意しておきます。
3. 開業直後から安定期の売上で計算している
開業してすぐに売上が安定する店ばかりではありません。立ち上がりの数か月を低めに置いたうえで、運転資金がいくら必要かも示します。
4. 指定食材の価格改定を織り込んでいない
食材の価格は変わります。本部が仕入れ先や卸価格を決めている場合、改定したときに加盟店の原価率がどう動くかを先に試算し、説明してから実施します。
5. テイクアウト・デリバリーの手数料を見ていない
配達サービスの手数料は、店内飲食にはない費用です。テイクアウト・デリバリーの比率が高い業態では、手数料を引いたあとの利益で収支を組みます。
収支モデルの作り方(5つの手順)
- 既存店の実績を集める(月ごとの売上・材料費・人件費・家賃・その他の経費。できれば12か月分)
- 店舗の条件で分ける(立地、席数、坪数、営業時間)
- 前提条件を書き出す(オーナーの労働の扱い、家賃、開業直後の売上の置き方)
- 楽観・標準・悲観の3通りで計算する
- 根拠と計算方法を、加盟希望者に説明できる形にまとめる
既存店が少ない段階では、使える実績そのものが少なくなります。その場合は、どの数字が実績で、どの数字が仮定かを分けて示すことが何より大切です。
加盟希望者に示すときの注意点
公正取引委員会の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」では、本部が予想売上や予想収益を示す場合、類似した環境にある既存店舗の実績など根拠のある事実と、合理的な算定方法に基づくことが必要とされています。あわせて、その根拠や算定方法を示すことも求められています。
また、既存店の平均などのモデル収益を示す場合は、厳密な意味での予想売上ではないことを、加盟希望者が理解できるようにする必要があります。
数字を良く見せるほど、加盟は決まりやすくなるかもしれません。けれど、加盟後に数字が届かなければ、不満やトラブルとして本部に返ってきます。収支モデルの示し方や法定開示書面の内容に不安がある場合は、弁護士などの専門家にもご確認ください。
よくある質問
FL比率は何%以下を目指せばいいですか?
一般には50〜60%が推奨とされています。ただし、業態によって材料費と人件費の配分は大きく違います。本部としては、自社の既存店のうち利益が残っている店のFL比率を基準にするのが現実的です。
既存店が1〜2店舗しかなくても、収支モデルは作れますか?
作れます。ただし、実績の数字と仮定の数字を分けて示してください。少ない実績を一般化しすぎないことが、加盟後の見込み違いを防ぎます。
FLRの家賃は、どの数字を使えばいいですか?
既存店の家賃ではなく、出店予定地の家賃で計算し直すのが基本です。本部が「家賃がいくらまでなら成り立つか」の上限を示しておくと、物件選びがぶれにくくなります。
まとめ
飲食のフランチャイズ本部が加盟店に示すべきなのは、FL比率・FLR比率・営業利益までを含めた収支モデルです。数字の水準以上に大切なのは、前提条件を明記し、楽観・標準・悲観の3通りで示すことです。
FLコストや原価率などの言葉は、フランチャイズ用語集(飲食の用語)でも確認できます。加盟開発そのものの数字の目安は「反響100件から加盟は何件?」で紹介しています。開業までの手続きの段取りは「【飲食フランチャイズの開業手続き】本部が加盟店のために整えるべき手順」をご覧ください。
収支モデルの作り方や、加盟希望者への示し方を整理したい方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
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