この記事の結論
飲食の加盟店が開業までに行う手続きは、保健所の飲食店営業許可、食品衛生責任者の設置、条件によっては防火管理者の選任や消防署・警察署への届出など、窓口がばらばらです。本部がやるべきことは、手続きを代わりに行うことではなく、「物件を契約する前に確認すること」と「いつまでに、誰が、何を出すか」を一覧にした開業スケジュールを用意することです。
加盟の契約が終わると、次は開業の準備です。物件、工事、採用、研修。そのなかで、加盟店が見落としやすく、しかも開業日をずらす原因になりやすいのが、役所への手続きです。
私は飲食・焼肉のフランチャイズで加盟開発の責任者を務め、50店舗の展開に関わりました。加盟開発は契約で終わりではなく、加盟店が予定どおりに開業できてはじめて成果になります。
この記事では、飲食のフランチャイズ本部が加盟店のために整えておくべき、開業手続きの段取りをまとめます。
飲食店の開業で必要になる主な手続き
業態や店の規模によって必要なものは変わりますが、主な手続きは次のとおりです。
| 手続き | 窓口 | ポイント |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 施設が基準を満たし、立入検査を受けて許可が出ます。工事の前に、図面を持って事前相談するのが基本です |
| 食品衛生責任者の設置 | — | 店舗ごとに1名必要で、兼任はできません。調理師などの資格者か、養成講習会の受講者がなれます |
| 防火管理者の選任 | 消防署 | 従業員も含めた収容人数が30名以上の店で必要です。延べ面積300㎡以上は甲種、未満は乙種の資格が要ります |
| 防火対象物使用開始届出 | 消防署 | 建物やその一部を新たな用途で使うときに届け出ます。さいたま市の例では、使用を開始する7日前までです |
| HACCPに沿った衛生管理 | — | 2021年6月1日から完全施行されています。小規模な事業者は、業界団体の手引書に沿って行うことで対応できます |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 公安委員会(窓口は警察署) | 午前0時〜6時にお酒を提供して営業する場合に必要です(主食を出す店は対象外)。和歌山県警の案内では、営業開始日の10日前までです |
※期限や様式は、自治体によって異なることがあります。表の内容は、各自治体・機関の公開情報をもとにした一般的なまとめです。出店地の窓口で必ずご確認ください。
このほか、税務署への開業の届出や、人を雇ったときの労働保険・社会保険の手続きもあります。こちらは税理士・社会保険労務士にご相談ください。
本部が整えるべき4つのこと
1. 物件を契約する前のチェックリスト
手続きのつまずきの多くは、物件を決めた後に見つかります。契約前に、次の点を確認する手順を本部で用意します。
- 図面を持って、保健所に事前相談したか
- 収容人数は何人か(防火管理者が必要になるか)
- 深夜にお酒を出す営業をするか(警察署への届出が必要か)
- 居抜き物件なら、既存の設備が基準を満たしているか
2. 開業日から逆算したスケジュール
開業日を決めたら、そこから逆算して、講習会の受講、許可の申請、保健所の検査、各種の届出を日付で並べます。講習会は日程が限られ、検査は工事が終わってから受けるため、どれか一つが遅れると開業日がずれます。
- 物件の契約前:保健所・消防署への事前相談
- 工事中:食品衛生責任者の講習受講、必要なら防火管理者の講習受講
- 工事完了後:保健所の立入検査、営業許可
- 開業前:消防署・警察署への届出(必要な場合)、衛生管理の記録の準備
3. 本部・加盟店・専門家の役割分担
申請するのは、営業する加盟店です。本部は手順書・チェックリスト・店舗の標準図面などで支えます。書類の作成を代わりに引き受ける場合は、行政書士法との関係に注意が必要なため、行政書士に依頼する形にしておくと安心です。
| 担当 | やること |
|---|---|
| 本部 | 手順書とチェックリスト、標準図面、開業スケジュールのひな形を用意する。進み具合を確認する |
| 加盟店 | 申請者として、保健所・消防署・警察署に申請・届出をする。講習を受ける |
| 専門家 | 行政書士(許認可の書類)、社会保険労務士(雇用の手続き)、税理士(開業の届出・税務) |
4. 衛生管理の記録をそろえる
HACCPに沿った衛生管理は、記録を残すことまでが求められます。手引書をもとに、記録用紙と手順を本部で用意し、全店で同じ形の記録を残すようにします。SVが店舗を回るときに確認できる形にしておくと、品質の差も見えやすくなります。
見落としやすい3つのポイント
1. 収容人数は「席数」ではない
防火管理者が必要かどうかは、従業員も含めた収容人数で決まります。席数だけで判断すると、必要な選任や講習を見落とします。
2. 居抜きでも、許可は新しく取り直す
前の店の設備が残っていても、営業許可は営業する人と施設ごとに受けるものです。設備が今の基準を満たしているかも、事前に確認します。
3. お酒の扱いは、提供の仕方で変わる
深夜にお酒を出す営業をするなら、警察署への届出が必要です。また、未開栓のお酒を持ち帰り用に販売する場合は、別に免許が必要になることがあります。業態を決める段階で、税務署などに確認しておきます。
よくある質問
開業の手続きは、本部が代わりに申請してもいいですか?
申請者は、営業する加盟店(法人・個人)です。また、報酬を受けて他人の官公署への提出書類を作成することは、行政書士の業務とされています。本部は手順書やチェックリストで支え、書類作成が必要な場合は行政書士に依頼する形にしておくと安心です。具体的な線引きは専門家にご確認ください。
居抜き物件なら、許可はそのまま引き継げますか?
営業許可は、営業する人と施設ごとに受けるものです。前の店の許可をそのまま使うことはできないため、新たに申請が必要です。既存の設備が基準を満たしているかも、保健所に事前に確認します。
手続きの期限は、全国どこでも同じですか?
法令で決まっている部分もありますが、届出の様式や運用は自治体によって違うことがあります。出店する地域の保健所・消防署・警察署に、必ず事前に確認してください。
まとめ
飲食店の開業手続きは、窓口も期限もばらばらです。本部がやるべきことは、物件契約前のチェックリストと、開業日から逆算したスケジュールを用意し、加盟店が迷わず進められるようにすることです。
手続きに出てくる言葉は、フランチャイズ用語集(飲食の用語)で確認できます。加盟店に示す収支の数字については「【FLコストとFLR】飲食フランチャイズ本部が加盟店に示すべき数字」で解説しています。
加盟店の開業支援の仕組みや、マニュアルづくりを整理したい方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
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