面談まで来たのに、決まらない。その原因が、加盟希望者の質問への「答え方」にあることは少なくありません。
面談で出てくる質問は、実はそれほど多くありません。本当に儲かるのか。お金は用意できるのか。自分にできるのか。そして、この本部を信じていいのか。
私自身、リラクゼーションサロンのフランチャイズに加盟する側として、決断までに3〜6か月迷いました。迷っていたのは、投資を回収できる見通しと、業界の将来性です。本部で加盟開発を担ってきた立場と、加盟した立場。その両方から、面談でよく出る10の質問と、答え方の考え方を整理します。
前提:質問の裏には、必ず「不安」がある
加盟希望者の質問は、情報が欲しいだけのものではありません。その裏には「失敗したらどうしよう」という不安があります。
質問には答えているのに、不安には答えていない。面談が成約につながらない本部では、このすれ違いがよく起きています。
以下、それぞれの質問について「質問の裏にある不安」「避けたい答え方」「信頼につながる答え方」の順に見ていきます。
お金に関する質問
質問1「本当に儲かりますか?」
質問の裏にある不安:自分のお金と生活を賭けて、大丈夫なのか。
避けたい答え方:「皆さん儲かっています」「必ず黒字になります」と言い切ること。
信頼につながる答え方:既存店の実績を、好調な店も厳しい店も含めて、根拠とともに示すことです。
中小企業庁がまとめたフランチャイズの手引きでは、売上や収益の予測を示す場合は根拠と算出方法を示すこと、既存店の平均などから作ったモデル収益を示す場合は、それが予想売上ではないことを加盟希望者が理解できるようにすることが求められています。言い切りは信頼を失うだけでなく、後のトラブルの火種にもなります。
質問2「投資は何年で回収できますか?」
質問の裏にある不安:うまくいかなかったとき、どこまで損をするのか。
避けたい答え方:いちばん好調な店舗の数字だけで作った回収シミュレーションを見せること。
信頼につながる答え方:売上は控えめに、経費は多めに置いた計画を、加盟希望者と一緒に作ることです。減価償却やリース料、借入の返済まで入れた収支を見せると、加盟希望者は「この本部は都合の悪い数字も出してくれる」と受け取ります。
私が加盟を決めた理由の一つも、既存店の実際の収支をもとに、自分で数字を組めたことでした。
質問3「融資は通りますか?自己資金はいくら必要ですか?」
質問の裏にある不安:そもそも始められるのか。何から手をつければいいのか。
避けたい答え方:「大丈夫です、通りますよ」と請け合うこと。審査をするのは金融機関で、本部が約束できることではありません。
信頼につながる答え方:必要資金の内訳と自己資金の目安、そして過去の加盟者がどんな順番で資金を準備したかという「流れ」を示すことです。
私が加盟したときも、融資は本当に通るのか、どういう流れで進めればいいのか、分からないことだらけでした。手順が見えるだけで、不安はかなり小さくなります。最終的な判断は、金融機関や税理士などの専門家に確認してもらうよう伝えることも、誠実さの表れです。
「自分にできるか」に関する質問
質問4「未経験でもできますか?」
質問の裏にある不安:経験のない自分が、本当にやっていけるのか。
避けたい答え方:「誰でもできます」と軽く答えること。
信頼につながる答え方:何ができれば大丈夫で、何が難しいのかを分けて話すことです。研修の期間と中身、開業後につまずきやすい場面まで具体的に伝えます。
「この業態に向かない人」の条件まで話せる本部のほうが、かえって信用されます。
質問5「本部は具体的に何をしてくれますか?」
質問の裏にある不安:契約した後、放っておかれるのではないか。
避けたい答え方:「全面的にサポートします」とだけ答えること。
信頼につながる答え方:開業前、開業直後、その後で、誰が・何を・どのくらいの頻度で行うのかを示すことです。
加盟後の「期待と違った」という不満の多くは、サポートの範囲があいまいなまま契約したことから生まれます。この点は「期待と違った」の正体は契約書にあるでも詳しく書いています。
「この本部を信じていいか」に関する質問
質問6「既存店を見学できますか?オーナーと話せますか?」
質問の裏にある不安:本部の説明は、本当なのか。
避けたい答え方:理由をつけて断る、または本部が選んだ好調店だけを見せること。
信頼につながる答え方:見学やオーナーとの面談を、前向きに受け入れることです。既存オーナーの率直な声は、本部の説明よりも重く受け止められます。
私が加盟を決めたときも、既存店を自分の目で見たことが大きな決め手になりました。
質問7「閉店した店はありますか?理由は何ですか?」
質問の裏にある不安:自分も同じように失敗するのではないか。
避けたい答え方:ごまかす、話をそらすこと。
信頼につながる答え方:事実と理由を、その後に本部が何を変えたかとあわせて話すことです。
小売・飲食のフランチャイズでは、店舗数の推移は契約前に書面で開示すべき項目の一つです。隠しても、いずれ分かります。閉店の理由と、そこから学んだことを話せる本部は、むしろ信頼されます。開示の考え方は情報開示はどこまでやるべきかにまとめています。
質問8「本部の代表と話せますか?」
質問の裏にある不安:長く付き合う相手として、信頼できるのか。
避けたい答え方:「担当者で十分です」と取り次がないこと。
信頼につながる答え方:できる限り、代表と話す機会をつくることです。加盟は、本部と何年も付き合う決断です。
私自身、本部の代表と直接話したことは、加盟を決めた理由の一つでした。
将来と契約に関する質問
質問9「この業界に将来性はありますか?」
質問の裏にある不安:今は良くても、数年後にはしぼむのではないか。
避けたい答え方:根拠のない楽観で押し切ること。
信頼につながる答え方:市場の動きを示したうえで、リスクも話すことです。トレンドに乗った業態なのか、長く続く業態なのかを、本部自身が正直に位置づけて伝えます。
質問10「途中でやめたくなったら、どうなりますか?」
質問の裏にある不安:抜け出せなくなるのではないか。
避けたい答え方:「やめる人はいません」と話をそらすこと。
信頼につながる答え方:契約期間、中途解約の条件、違約金、競業避止の範囲を、契約書の該当箇所を示しながら説明することです。やめるときの話を嫌がらない本部ほど、加盟希望者は安心します。
日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は自主基準として、契約前に7日以上の熟考期間を設けることを定めています。急がせないことも、信頼の一部です。
答え方を、担当者任せにしない
この10の質問への答え方は、担当者個人ではなく、本部として決めておくべきものです。担当者によって答えが違えば、加盟希望者は不安になります。言い切りや誇張が混じれば、後のトラブルにもつながります。
- よく出る質問と答え方を、本部として文書にまとめる
- 数字を示すための資料(既存店の実績、モデル収支)と、その根拠の説明をそろえる
- その場で答えられない質問は持ち帰り、後日きちんと回答する
150店舗から350店舗への拡大に関わった本部でも、成約の質を落とさずに伸ばせたのは、トークの型と数字の管理を整え、個人の営業力に頼らない形にしたからでした。面談での答え方は、その中心にあります。
面談の前後のどこで成約が止まっているかを確かめたい方は、反響・面談・成約、どこで止まっているかもあわせてご覧ください。
まとめ
加盟希望者の質問は、情報を求めているようでいて、実は不安を打ち明けています。
言い切らない。隠さない。急がせない。都合の悪い数字も、やめるときの話も、先に出す。遠回りに見えて、それがいちばん成約につながる答え方だと考えています。
※情報開示や契約に関する法令の適用は、業種や契約内容によって異なります。個別の判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。
面談での答え方や、加盟希望者に出す資料の作り方に悩む本部の方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。加盟した側と支援する側、両方の視点からお話しできます。